下記記事で紹介したように、戦略的リカバリーを実践するためには、各疲労状態に応じたリカバリーを行うことが必要です。
例えば、複数ある疲労状態の一つに中枢(脳)の疲労があります。中枢(脳)の疲労が続くと、ボーッとしたり集中力が欠けた状態になり、認知・判断能力が低下することは明らかになっています。この中枢性の疲労に対するリカバリー方法の一つはズバリ睡眠です。
特に中枢性の疲労回復のために、より良い睡眠対策を考えなければならないのが暑熱環境時です。夏の寝苦しい熱帯夜は、なかなか良い睡眠を取ることができません。
そのため睡眠時にエアコンをつけることになるのですが、そこで悩むのが「夏の練習や試合を想定すると、暑熱順化(暑さに慣れる)のためにエアコンを使用しないほうがいいのか? それとも寝苦しい夜を回避するためにエアコンを使用したほうがいいのか?」ということです。
そこで、今回は中枢(脳)の疲労回復を目的としたより良い睡眠を確保するために、暑熱環境下における夏場のエアコン使用に関する考え方について紹介します。
Okamoto-Mizunoは睡眠環境(温度と湿度)を変化させた場合においての、就寝時から起床時までにおける直腸温の変化について調査をした結果について報告しています(図A)。図の見方は縦軸が直腸温度、横軸が時間を示しています。睡眠時間は8時間とし、その間の直腸温を3条件で比較したものになります。
①睡眠中にエアコンを使用し続けた状態(室温26℃、湿度50%)では、直腸温は就寝と同時に下がり続け、起床時に上がってくることが分かります。
②前半4時間でエアコンを使用し(室温26℃、湿度50%)、後半4時間でエアコンを止めて暑熱環境にした場合(室温32℃、湿度80%)では、就寝と同時に直腸温度は下がり続け、後半になると少し直腸温度が戻り、起床時では3条件間で最も高くなっています。
③前半4時間を暑熱環境(室温32℃、湿度80%)とし、後半4時間でエアコンを使用した場合(室温26℃、湿度50%)では、就寝時~前半は直腸温が下がらない状況ですが、後半には直腸温が下がり、起床時では3条件の中でも最も直腸温が低くなりました。
通常、起床時に徐々に体温が上がってくることで目覚めの良い朝を迎えることができます。
一方、起床時に体温が上がってこないと、目覚めが悪く快適な睡眠をした実感がわかなくなります。
従って、夏場における睡眠環境としては、タイマー機能をつけて、②のように入眠時にエアコンを使用し、後半にはエアコンを止めて、起床時に体温が上がってくるような環境をつくることが、中枢性の疲労回復を狙いとした睡眠環境づくりが必要なのです。
また、③のように後半のみエアコンを使用すると、前半の暑熱環境でかいた汗を後半に急激に冷やすことになり、寝冷えを引き起こしやすくなります。さらに、前半の寝苦しい夜からのリバウンドで後半に深い睡眠状態になってしまうため、起床時に眠気が強くなってしまうのです。
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https://www.bbm-japan.com/baseballclinic/17281465