【高校野球】投球障害に対する肩甲骨周囲筋のトレーニング方法

投球障害を呈する選手に対するトレーニングでは「肩関節が安定したポジションで動かすこと」が最大の目標です。
医学的には「ボールリリースまでの全ての区間で求心位を保持する」ことが必要となります。

過去のコラム(下記参照)では、肩甲骨の評価方法をまとめましたが、今回はそのアプローチ方法を解説いたします。

【高校野球】肩甲骨の動きから投球障害を未然に防ぐ!その具体的な評価方法とは?

目次

  1. 僧帽筋下部繊維筋力・胸椎伸展可動域の改善
  2. Scapular Push Up
  3. サンドボールを用いたトレーニング
  4. MER~ボールリリースにおける安定性
  5. まとめ

投球動作では僧帽筋下部繊維の筋力低下が肘下がりなどの不良な動作に繋がります。
また「胸の張り」を出すことが良好な投球動作に関与するため、それらを意識したトレーニングを行います。
頭の後ろに手を組んだ姿勢がスタートポジションです。
この際に、肘は耳のラインより少し前方に位置させ、頭の後ろから手を離す動作を繰り返します。
ポイントは肘だけで腕を後方に引かれないこと、胸を張る動きに強調させることです。
まずはこのような無負荷のトレーニングを行うことで、可動性の獲得を目指します。

次はClosed Kinetic Chainでのトレーニングです。
腕立て伏せの開始姿勢から、前腕を地面につけ、肩甲骨のみで腕立て伏せを行います。
この動きで生じる肩甲骨の外旋(内転)・内旋(外転)運動の可動性や筋力は投球動作のリリース時に重要な役割を示すため、ある程度の負荷がかかった状態でもしっかりと地面を押すことを意識してください。

僧帽筋の求心性・遠心性筋力を強化するトレーニングです。
サンドボール(重錘やペットボトルでも可)を持った状態で肘を伸ばし、腕を動かします。
しっかりと両肩のラインより肘が高い位置にあることを確認しながら行わせます。
筋力の弱い選手は徐々に肘が下がってくるため、特に注意が必要です。

最後は肩関節最大外旋位(MER)からボールリリースにおいて、肩関節を求心位に保つことを目的としたトレーニングです。
サンドボールを用いたトレーニングは球速アップにも効果があることが示されているため、球速アップにも関連するトレーニングです。

肘を両肩のラインより高い位置を保持したまま、ボールリリースまでの動きを再現します。
投球障害を呈する選手はボールリリースにかけて肘下がりや前方への突き出し(水平内転角度の増大)が見られることが多いです。
そのため、このトレーニングにおいてもMERからボールリリースまでの区間で肘が下がらずに腕を振ることを意識させます。

肩甲骨周囲筋の可動性・安定性獲得を目的としたトレーニングの一部を紹介しました。
負荷は各選手の体格を考慮し、重すぎない負荷で十分です。
ポイントは肘が下がらない正しいポジションでボールリリースのポジションまで動かすことなので、形を意識して行ってください!

この記事の作成者


内田智也内田智也
Tomoya Uchida

理学療法士

兵庫県明石市出身、理学療法士としてスポーツクリニックで勤務しながら、大学で三次元動作解析による投球動作の研究を行い、様々な論文を執筆している。これまでに小学生からプロ野球選手まで幅広い年代の治療やトレーニング指導を行っており、高校野球部のトレーナーとしてチームサポートも行っている。


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