球速アップと障害予防に関してシリーズで記事を書いていきたいと思います。
第1回は、体づくりの基礎知識として重要な「投球速度と筋量」に関してです。
球速を早めたければ、体を大きく(除脂肪体重を増加)させないといけません!
今回はデータを交えて、そのポイントをお伝えしたいと思います。
目次
1. 除脂肪体重を増やすことが球速アップにおいて重要
勝亦らの大学生を対象とした報告(下記参照)では、除脂肪体重(体重−脂肪量)と球速は正の相関にあると報告されています。
つまり、体重を増やすのではなく除脂肪体重を増やすことが球速アップにおいて重要になります。
下記は筆者が帯同している社会人野球チームの投手成績・最高球速と除脂肪量を示したものです。球速が速い投手程、身長あたりの除脂肪量が高い傾向にあるのがわかります。
2. 上肢筋・大腿筋量が投球速度と相関
筋量としては上肢筋・大腿筋量が投球速度と相関を示しています(下記参照)。
これらを有効的に鍛える方法としてスクワットとデッドリフトがあります。
3. スクワットとデッドリフトが投球速度と相関
下記は、スクワットの1回を持ち上げる最大重量(1RM)・デッドリフトパワーが投球速度と相関するというデータです。
パワーとは単位時間あたりの仕事量のことですので、いかに速く持ち上げるかということになります。筋肉量を増加することは除脂肪体重を増やすことへ繋がり、球速アップへ欠かせないと考えられます。
筋肉量を増加するためには強い重量(負荷)をかけなければならないと思われがちですが、そんなことはありません。
筋肉量を増加することにおいて重要なことは総負荷量を増やすという考え方です。
4. 総負荷量を増やすことがポイント
総負荷量は負荷量×回数×セット数で求められるため(下図)、負荷量が少なくとも、回数とセット数を増やすことで総負荷量を増やすことは十分に可能になります。
Burdらは負荷量を少なくして回数を増やした群と負荷量を多くして回数を減らした群の筋たんぱく質合成率を比較しています。
結果としては、総負荷量を多くした低負荷群の方が、筋たんぱく質合成率が高い結果となっています。
これにより、低負荷でもきちんと回数をこなすことで筋肉量を増加させることが可能であるということが示されたのです。(下記参照)
5. タンパク質摂取の重要性
筋肉量を増加させることを考えると重要になるのがプロテイン摂取になります。
プロテイン摂取量の目安はどのくらいになるのか?その答えは体重(g)に0.00162をかけた値となります。
例;60kg⇒89g(下記参照)
この量をこえても、あまり効果が変わらないというのはポイントかもしれません。
一方で、筋トレを行う上で注意しなければならないことがあります。
Bioloらは、筋トレとプロテイン摂取の有無の組合せで、筋たんぱく質合成量の差を比較しました(下記参照)。
注目するべきは、空腹で筋トレを行い、プロテイン摂取を行わなかった場合、筋たんぱく質合成量は低下したという結果です。
これは、いかに食事と筋トレをセットで行うことが重要かということを示したものになります。
6. まとめ
- 球速アップにおいて除脂肪量は重要
- 筋量において重要な部位は大腿・上肢
- 球速アップにおける筋トレの重要項目はスクワット・デッドリフト
- 負荷量は総負荷量の観点が重要
- 筋トレとたんぱく質摂取はセット
- 筋トレだけで速い球が投げられる訳ではない
となります。球速アップの第一歩は自分の体が現在どうなっているのかを知ることだと思われます。知った上でトレーニングを選択していきましょう。