平成24年度より千葉大学整形外科上肢グループの取り組みとして、離断性骨軟骨炎(りだんせいこつなんこつえん)の早期発見および野球障害予防を目的とした野球ひじ検診を開始しました。
ひじ検診では、われわれ整形外科医による超音波診断器(エコー)を用いた検査と理学療法士(リハビリの専門家)による理学検査、トレーナーによる投球動作獲得に向けた運動指導を行っています。
障害がない場合でも体幹、下肢の柔軟性低下や安定性の低下によって今後引き起こされる可能性のある障害を予防するためのトレーニング指導なども行っております。
落合信靖(千葉大学医学部附属病院 整形外科)
目次
1. 野球肘(ひじ)とは
野球肘(ひじ)とはボールを投げることで起こる「ひじの痛み」のことです。
子どもの野球ひじで多いのは・・・
ボールをくりかえし投げることでおこる、ひじの「内側」の痛みです。
ひじの内側の痛みは・・・フォームが悪い、投げすぎ、体が硬い、バランスが悪いなどが原因で起こることが多いです。
2. 上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(じょうわんこつりだんせいこつなんこつえん)
上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(OCD)とは?
→ひじの外側におきる骨軟骨障害です。野球をやっている子供たちの2.1%に認められます(千葉ひじネット調べ)。
進行すると、ひじが痛くて長期間野球ができなくなったり、 他の場所から軟骨を移植する手術が必要になる場合もあります。
3. 肘検診の実施
千葉県では、少年野球連盟ご協力のもと、医師・理学療法士・トレーナーが中心となって肘検診を実施しております。
エコーでの検査
投球障害予防に必要なトレーニングの指導
紙鉄砲を使ったパフォーマンスアップ&障害予防のためのトレーニング指導
4. 終わりに
離断性骨軟骨炎になってしまった経験から検診活動に取り組んでいます
富士整形外科病院 木島丈博
私は子供のころから野球が大好きで、将来の夢はもちろん甲子園に出場してプロ野球選手になることでした。しかし中学1年生のある日、いつも通り練習していると急に肘にガクッとした感触があり、痛みと腫れで肘の曲げ伸ばしがほとんどできなくなってしまいました。あわてて病院を受診すると、医師から”もう右で 投げるのは無理でしょう”といわれ、ショックで頭が真っ白になったことを今でも覚えています。
整形外科医に なった今から考えると、知らない間にすでに進行期の離断性骨軟骨炎になっていた右肘の軟骨の一部がはがれ、遊離体となってしまっていたのだと思います。その後、利き手変更して左投げで野球を続けましたが、バットスイングでも痛みが生じる状態になってしまったため、高校野球を断念せざるをえず甲子園を目指すことさえできませんでした。このことは今でも後悔しています。
勝負事に「たら・れば」はないとよく言いますが、もし自分の肘の障害が初期の段階で発見できていたら悲しい思いをせずに野球を続けることができたはずという思いは今でもあります。その思いから現在、野球肘検診活動に取り組んでおります。
もし検診で離断性骨軟骨炎が発見されてしまった場合も「発見されて残念だ」ではなく「治すチャンスがある」と考えてほしいと思います。われわれは、みなさんが今後も楽しく野球を続けていくためのサポートができればと考えております。
5. 千葉ひじネット フィジカルノート
検診で使用しているフィジカルノートを下記からダウンロードできます。
是非、チェックしてみてください。