夏と冬、ウオーミングアップ時間は同じでいいの?

筋肉をホットパックなどでただ温めるよりも、ジョギングなどで能動的に筋温を高めたほうが運動パフォーマンスは高くなることは以前紹介しました。

ウオーミングアップはただ筋を温めればいいの?

では、能動的なウオーミングアップ時間は夏も冬も同じでよいのでしょうか?

大学1年生に対してウオーミングアップでの理想的なジョギング時間についてアンケートをとったところ、季節によって時間を変えたほうがいいと回答したのは61.1%、季節関係なく同じ時間がいいと回答したのは約40%になりました(図A)。

アップ時間

果たして実際はどうなのでしょうか? 今回は「夏と冬で同じ対象者に対して同じようなウオーミングアップをした時に、運動パフォーマンスはどう変わるか」について紹介します。

まずは実験の条件設定について紹介します。
対象は健康な体育大生8名とし、同じ人物が暑熱環境下(気温31.8±2.1℃、湿度64.9±19.2%)と、寒冷環境下(気温12.1±2.6℃、湿度38.3±30.6%)それぞれで行いました。
ウオーミングアップ方法は、最大酸素摂取量の65~70%の負荷でトレッドミルでのジョギングを10分間、20分間、30分間で行います。ウオーミングアップ後に、最大パワーの指標としてスクワットジャンプ(W/体重)、バネの能力の指標としてリバウンドジャンプ(RJ指数)、敏捷性の指標として立位ステッピングテスト(回数)をそれぞれ測定しました。

夏と冬

図Bを見てください。
◇が暑熱環境下、□が寒冷環境下でのスクワットジャンプの結果です。

暑熱環境下では10分よりも20分のほうが最大パワーの結果は高くなっていますが、30分となると逆に低下してしまっています。
一方、寒冷環境下では10分よりも20分、20分よりも30分のほうがスクワットジャンプの値が高くなっています。

つまり、暑熱環境下では30分以上だと筋温が上昇し過ぎてしまい、ハイパワー能力は逆に低下してしまうことを意味しています。筋温と最大パワー発揮には最適な気温があり、それよりも低過ぎても、高過ぎてもパフォーマンスは低下します。おそらく、今回もその影響を受けたのだと考えられます。

その他の結果に関しては下記サイトをご覧ください。
https://www.bbm-japan.com/baseballclinic/17272519

この記事の作成者


笠原政志笠原政志
Masashi Kasahara

国際武道大学体育学部・大学院 准教授
博士(体育学)
日本体育協会公認アスレティックトレーナー
NSCA認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト
日本トレーニング指導者協会認定上級トレーニング指導士

千葉県習志野市出身。スポーツ選手の傷害予防と競技力向上に関するコンディショニングを科学的に捉えたアプローチを実践し、現場と研究の橋渡しの役割を担っている。特に今まで経験値による指導が多かった野球選手のコンディショニングについてを、客観的に示した上でのアプローチ方法について研究したものを現場に提供している。


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